結膜炎
結膜は白目の表面を覆う半透明な膜です。ここでは結膜に起こる代表的な病気をご紹介しています。結膜炎は、この結膜が炎症を起こしたもので、感染によるものとそれ以外に大きく分けられます。目やに、充血、かゆみ、異物感などが主な症状です。
感染性結膜炎
感染性結膜炎とは細菌やウイルスに感染して起きている結膜炎です。
細菌性結膜炎
抗菌点眼薬で治療します。インフルエンザ菌や肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などによるものがあり、感染力はあまり強くありません。
クラミジア結膜炎
クラミジアトラコマティスによる結膜炎で、以前はトラコーマと呼ばれていました。結膜だけでなく、角膜にも炎症を起こし、視力に影響が出る場合もあるので注意が必要です。有効な抗生物質を使っても治療には数ヶ月かかります。
性感染症であり、母子感染も起こるため、パートナーの検査や治療も必要です。
ウイルス性結膜炎
代表的なものにアデノウイルスによる結膜炎があります。感染力がとても強く、タオルなどを介して感染することもあることから、「はやり目」と呼ばれることもあります。ウイルスですから抗菌薬が効かず、有効な薬剤はありません。そのため、症状を緩和するものを主に使って治療します。ただし、細菌による混合感染が起きやすいため、抗菌点眼薬を予防的に使用する場合もあります。なお、症状が治まってから角膜に点状の白い濁りが出てくる場合がありますので、完全に治るまで治療を続けてください。
なお、アデノウイルスによる結膜炎は感染力が強いため、下記のことに注意する必要があります。
手の清潔を保つ
こまめに洗って、できるだけ目やその周辺に触れないようにします。
目の周囲は使い捨てできるもので拭きましょう
目やにや涙が気になったら、捨てることができるペーパータオルやティッシュなどで拭き取ってください。
登校を控える
感染の拡大防止のため、眼科医の指示に従ってしばらく登校を控えてください。
経過中に黒目(角膜)の表面に小さな点状の濁りが出てくることがありますので、自覚症状がなくなったからといって治療を自己中断しないようにしてください。
アレルギー性結膜炎
アレルギー疾患であり、アレルギーを引き起こす物質のアレルゲンによって起こる結膜炎です。アレルギー疾患は日本人の約30%がかかっているとされており、近年、患者数が増え続けています。
アレルゲンになるものとしては、季節性のスギ花粉、通年性のハウスダストなどが多く、ハウスダストの場合は1年中症状が現れます。また、アレルギー性結膜炎では、コンタクトレンズの汚れがアレルゲンとなって発症するケースもあります。
最近増えているアレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などのアレルギー性疾患ですが、日本では約30%の方が持っていると言われています。
点眼薬を使った治療を行い、かゆみを抑える抗ヒスタミン点眼薬、強いかゆみを抑えるステロイド点眼薬や免疫抑制点眼薬などがあります。季節性のアレルギー性結膜炎には、これから出てくるかゆみを抑えるケミカルメディエータ遊離抑制薬も有効です。スギ花粉によるものでしたら、飛散時期の前に使用することでスギ花粉飛散時期のかゆみを抑えることが可能です。
また、アレルゲンにより、日常生活の注意点が変わります。下記のことに注意して症状をできるだけ抑えましょう。
花粉対策
外出時のマスク、眼鏡、帽子の着用と、帰宅の際に玄関前で付着した花粉をよく払ってから入室し、手洗い・うがい・洗顔を行うことを心がけます。
ハウスダスト対策
掃除の徹底が基本です。布はダニが繁殖しやすいため、ソファやじゅうたんにはこまめに掃除機をかけてください。また、ほこりが多い場所では濡れた雑巾などを使ってほこりが舞い上がらないようにします。布団は太陽に当てて干し、裏表に掃除機をかけます。
翼状片
白目の部分を覆う結膜が、目頭(めがしら)の方から黒目に向かって三角形状に伸びてくる病気です。痛みやかゆみなどの症状がないため、鏡を見ないと気付かないことがあります。原因は不明で、紫外線などの作用によるものと見られており、高齢者に多いのが特徴になっています。黒目の部分を覆ってしまうため、視力低下につながりますので、早めに受診してください。
なお、目の外傷、やけど、角膜潰瘍などになって回復している期間に翼状片に似た症状が現れる場合があり、これは偽翼状片と呼ばれています。
進行を抑える薬がなく、視力に影響が出てきたら手術を行います。影響がない段階では、異物感を抑える点眼薬を使うこともあります。手術をしても再発率が高いため、結膜の切除に加え、正常な部分の結膜を縫い付ける結膜弁移植や自己結膜移植を行います。切除した後、抗がん剤のマイトマイシンCを薄めて塗布するなどが行われる場合もあります。手術は日帰りで受けることができ、所要時間は30分程度です。
治療前
治療後
結膜下出血
結膜下の血管が破れてしまい、出血で白目の部分が真っ赤になります。鼻を強くかんだ時や目を強くこすって起こる場合もありますが、原因がわからないこともよくあります。
出血が結膜下にとどまっているため、眼球内部に血液が入ることはなく、視力に影響を与えることもありません。痛みはなく、違和感がある程度で、特に治療の必要はなく、時間が経過したら自然に解消されていきます。ただし、人前に出るお仕事などで、出血をできるだけ早く解消したいという場合には、血管収縮剤などで目立たなくさせる治療は可能です。症状に気付いてから数日経過した時期に、蒸しタオルなどで温めるのも効果的です。ただし症状があってすぐに温めると出血を促進する可能性もありますので、ご注意ください。
なお、高血圧などの疾患や、外傷や急性結膜炎をともなっている場合には、そちらの治療をしっかり行うことも重要です。
結膜弛緩症
結膜が弛緩してたるみ、まばたきなどの際に違和感や不快感が生じる病気です。弛緩が進行すると黒目に結膜がかぶさってくる場合もあります。
結膜は眼球が動いても白目部分をカバーできるよう、適度なゆるみがありますが、なんらかの原因によってゆるみが強くなり、下まぶたにそってゆるみがたまって起こります。ヒダ状になった結膜のゆるみによって、涙が外に流れる流涙が起こりやすくなる場合もあります。
違和感や流涙がある場合には、手術がおすすめできます。余分な結膜だけをレーザーで切除するだけですから、出血がほとんどなく、治りが早く、傷跡が目立つことはありません。手術時間は15分程度なので、当院では日帰り手術を行っています。